歴史で理解する作業療法と理学療法の違い



一般の方や多職種からたびたび「作業療法と理学療法の違いがわからない」という質問を受けます。

学生たちからも「高校の頃は違いがわからなかった」という意見を聞きます。

1965年に制定された法律名も「理学療法士及び作業療法士法」というようにごっちゃですから違いがわからないのも無理ないかもしれません。

しかし結論から言うと、作業療法と理学療法は歴史をふり返るとまったく違います

「作業療法は手、理学療法は足」などといったしょうもない区別では説明できないぐらい全然違うんです。

ヘルスケア領域は歴史的起源を問うと、だいたいヒポクラテスにたどりつくきます。

ほとんどの領域がここに起源を求めるので、歴史的な違いを理解するにはあまり意味がありません。

領域の歴史をふり返るには、その領域が専門職として成立したところで踏みとどまる必要があります。

すると、作業療法も理学療法も1800年から1900年代前半で専門領域として立ち上がり、第一次世界大戦がきっかけになって大きく発展していることがわかります。

その際、作業療法が理学療法的アプローチを取りいれるようになって、両者の違いが極めてわかりにくくなります。

混乱した状態のまま日本に輸入され、1965年に法律が制定されちゃったので、現在の混乱につながることになります。

さて、作業療法と理学療法の歴史の詳細は成書にゆずりますが、成立前後の特徴を見ると両者にはかなり違いがあります。

専門領域として立ち上げた職種は;
  • 作業療法・・・建築士、芸術家、ソーシャルワーカー、教師、医師、看護師、哲学者たちの学際系チーム
  • 理学療法・・・医師、看護師などの医療系チーム
アイデアの起源は;
  • 作業療法・・・教育、哲学、道徳療法、社会運動など。
  • 理学療法・・・物理医学など。

対象は;
  • 作業療法・・・主に精神障害者だったが、身体障害、発達障害にも応用される。
  • 理学療法・・・身体障害者。
主たる技術の特徴は;
  • 作業療法・・・障害をもった人が有意義な時間を過ごせるように支援する。
  • 理学療法・・・電気治療、運動療法、物理療法、徒手療法などの方法で治療する。
他にもいろいろありますけど、「作業療法と理学療法の違いがわからない」という疑問が生じる余地がないぐらい、両者は違うものでした。

歴史を踏まえても、「作業療法と理学療法は似たようなもんだ」という人は、ゾウムシとゾウを比べて「似たようなもんだ」と言うぐらい雑だと思います。

第一次世界大戦で作業療法が理学療法的アプローチを取りいれなければ、現代における両者の区別はもっと簡単だったことでしょう。

歴史的な違いを把握すると、それぞれの療法が「何のために?」存在しているのか、という理解を深めることができます。

歴史的理解からとっても単純化すると以下のようにまとめられるでしょう。

作業療法は、身体障害、精神障害、発達障害などの区別に関係なく、充実した時間を過ごせるようにするために存在している、と言えるはずです。

作業療法は、この目的を達成するために、いろんな活動を使って支援する。

他方、理学療法は身体障害を改善するために存在しているといえるはずです。

理学療法は、上記の目的をやり遂げるために電気、運動、徒手などの手段を活用する。
以上から、作業療法と理学療法は全く違うといっても過言ではないぐらい違う、ということがわかると思います。

「作業療法と理学療法は似たようなもんだ」なんていうナイーブでチープな議論はしちゃ駄目よ。