作業的公正を根っこから理解する


作業科学者のWilcockの理論の特徴は「作業は生存と進化に不可欠である」という視点に根ざすところです。

彼女の著書を読むと、人間が過酷な地球環境のもとで生きぬき、次第に変化していくプロセスの中心に作業があるということがとてもよく理解できます。

もちろん、「作業は生存と進化に不可欠である」というテーゼは、彼女がTownsendとともに提案した作業的公正(occupational justise)という考え方にも通底しています。

基本的な理路はこうです。

人類が地球上に誕生したときから、個人や集団で生きぬくために何らかの作業が必要でした。

例えば、狩りをする、食物を採取する、居住環境を確保する、周囲の人びとと協力しあう、家族を作って子どもを育てる、などさまざまな作業が人類の起源か行われてきました。

つまり、人類は自他ともに生存できるようにするために、作業を通して生物的、身体的、精神的、社会的ニーズを満たしてきたわけです。



また、人類はそれを長い年月をかけて重ねることによって徐々に進化してきました。

人類の起源から作業は生存と進化の中心にあったわけです。

作業を通して生存と進化が成立するためには、自他がともに作業に原則平等に関われる状況が欠かせません(作業的公正)。

特定の属性をもつ人だけが必要な作業に関われる状況は、人類という種の生存と進化を支えることができないからです(作業的不公正)。

つまり、人類は作業的公正という構造をその起源から必要としていた、というわけです。

作業的公正という概念は、私たち人間は原則平等に「したい/する必要がある作業」に参加できる権利がある、という意味です。

Wilcockの理論の強みはそれを、人類の起源を底板に生存と進化という視点から基礎づけているところにあるのです。

この理解を外すと、この概念の意味を浅くしか受け取れなくなり、臨床の作業療法士に関係が薄いという感度をもたらします。

作業的公正は、作業療法士を含む人類の生存と進化の問題なので、そーゆー感度は基本的に誤解です。

ぼくたち作業療法士は作業的公正という概念によって、人類の課題を突きつけられていると理解する必要があるでしょう。