ジレンマ学習



めちゃ有名な本ですが、本書は正義論のエッセンスを理解するにはもってこいの内容です。


本書はジレンマ学習を通して、功利主義、リバタリアニズム、義務論、リベラリズム、徳倫理、コミュニタリアニズム等のエッセンスと限界を明らかにしていきます。

ジレンマ学習の問題は、ジレンマを共有できない人にはいまいり理解できないというところにあります。

しかし、サンデルは本書で象徴的なジレンマを採用することで、その問題をたくみに克服していると思います。

ハーバードの法哲学講義がベースにありますが、これほどうまく構成された講義を受けることができれば、よほど学生の知性が不調でない限りにおいて正義論のエッセンスを理解できるでしょう。


この辺りの手法は、医療者教育で大いに参考になると思いました。

注意点としては、サンデルは本書で「◯◯は正義か否か」という問いのもと、十全な結論は提示されないところにむかって洞察を展開していきます。

この「論じ方」は、それぞれの正義論のエッセンスと問題を顕にするという目的達成のためにあえて採用された戦略的方法だと理解したほうがよいと思いました。

つまり、読者が「正義」の原理を明らかにしたいという目的を持ったならば、また別の「論じ方」が必要になるということです。

サンデルが本書で採用した方法では、本書の内容が例証しているように、それは明らかにならないでしょう。

では、いったいどのような「論じ方」であればいいのでしょうか?

結論は◯◯◯◯◯なのですが、読者はそれが何なのかをしっかり考えながら、もう一度本書に挑むことによって、より深く正義をつかみ直すことができるでしょう。